とがのをさん こうさんじ
■高山寺について
栂尾山 高山寺の
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■明恵上人坐像
開山堂に安置される等身の明恵上人像である。黒衣に袈裟を掛け、念珠を持つ。その表情には厳しさと温かさとが並存し、上人の相貌をよく伝える。嘉禎2年(1236)、明恵の遺徳を敬い、上人が示寂した禅堂院の東南に十三重塔が建立される。塔内には上人年来の本尊であった弥勒菩薩像をおさめ、禅堂院と塔を結ぶ渡廊に上人の木像が安置された。それが本像であろう。
■鳥獣人物戯画
高山寺を代表する宝物である。現状は甲乙丙丁4巻からなる。甲巻は擬人化された動物を描き、乙巻は実在・空想上を合わせた動物図譜となっている。丙巻は前半が人間風俗画、後半が動物戯画、丁巻は勝負事を中心に人物を描く。甲巻が白眉とされ、動物たちの遊戯を躍動感あふれる筆致で描く。甲乙巻が平安時代後期の成立、丙丁巻は鎌倉時代の制作と考えられる。鳥羽僧正覚猷(かくゆう、1053〜1140)の筆と伝えるが、他にも絵仏師定智、義清阿闍梨などの名前が指摘されている。いずれも確証はなく、作者未詳である。天台僧の「をこ絵」(即興的な戯画)の伝統に連なるものであろうと考えられている。
■表参道
高山寺は京都市右京区栂尾(とがのお)にある古刹である。創建は奈良時代に遡るともいわれ、その後、神護寺の別院であったのが、建永元年(1206)明恵上人が後鳥羽上皇よりその寺域を賜り、名を高山寺として再興した。
神護寺のある高雄から白雲橋を越え、周山街道を道なりに進むと表参道に入る。石段上の左手に「栂尾山 高山寺」の石碑(富岡鉄斎筆)がある。やがて道は平坦になり、かつて大門があったと伝える場所に今は石灯籠が立つ。木漏れ日のもと正方形の石敷きが17枚連なる意匠が美しい。
■裏参道
裏手の駐車場・バス停から境内に入る道が裏参道である。近年はこちらを利用する人が多い。苔に覆われた石垣と草木の中をつづら折にのぼっていく。一木一草をそのままに、手を入れすぎない自然が美しい。段を登り切ると、石積みの上に低い白壁が続く。壁の向こうが石水院である。境内は昭和41年(1966)「史跡」、平成6年(1994)「世界文化遺産」に登録された。
■石水院
桁行正面3間、背面4間、梁間3間、正面1間通り庇。一重入母屋造(いりもやづくり)、妻入、向拝(ごはい)付、葺。五所堂とも呼ばれる。創建当時、現石水院は東経蔵として金堂の東にあった。安貞2年(1228)の洪水で、東経蔵の谷向いにあったもとの石水院は亡ぶ。その後、東経蔵が春日・住吉明神をまつり、石水院の名を継いで、中心的堂宇となる。寛永14年(1637)の古図では、春日・住吉を祀る内陣と五重棚を持つ顕経蔵・密経蔵とで構成される経蔵兼社殿となっている。明治22年(1889)に現在地へ移築され、住宅様式に改変された。名をかえ、役割をかえ、場所をかえて残る、明恵(みょうえ)上人時代の唯一の遺構である。
■開山堂
明恵(1173〜1232)が晩年を過ごし、入寂した禅堂院の跡地に立つ。明恵上人坐像が安置され、御影堂信仰の対象となった。建物は室町時代に兵火をうけて焼亡し、江戸時代に再建されたものである。現在、法要はこの開山堂で営まれることが多い。1月8日に明恵上人生誕会、1月19日に明恵上人命日忌法要、11月8日に献茶式が行われる。
■金堂
かつての本堂の位置に立つ。桁行3間、梁間3間の一重入母屋造、銅板葺。承久元年(1219)に完成した本堂は、東西に阿弥陀堂、羅漢(らかん)堂、経蔵、塔、鐘楼、鎮守を従えた檜皮葺(ひわだぶき)5間4面の堂宇で、運慶作の丈六盧舍那仏(るしゃなぶつ)などが置かれたという。その本堂は室町時代に焼失し、現在の金堂は江戸時代寛永年間(1624〜44)に御室仁和寺真光院から古御堂を移築したものである。釈如来像を本尊とする。
■明恵上人御廟
開山堂上の御廟は明恵上人の墓所である。覆屋の中に古い五輪塔を収める。廟の手前左手の一段高くなった所に古色を留めた塔が立つ。左端が宝篋印塔。高山寺型と呼ばれる古式の塔で、上人に帰依した富小路盛兼の寄進と伝える。その右が如法経塔である。廟近くには歴代住持たる土宜法龍、土宜覚了、小川義章、葉上照澄の墓もある。墓域の入口に明恵の遺訓を記した小川義章筆の石碑「阿留辺幾夜宇和(あるべきやうわ)」が立つ。
■茶園
高山寺は日本ではじめて茶が作られた場所として知られる。栄西禅師が宋から持ち帰った茶の実を明恵につたえ、山内で植え育てたところ、修行の妨げとなる眠りを覚ます効果があるので衆僧にすすめたという。最古の茶園は清滝川の対岸、深瀬(ふかいぜ)三本木にあった。中世以来、栂尾の茶を本茶、それ以外を非茶と呼ぶ。「日本最古之茶園」碑が立つ現在の茶園は、もと高山寺の中心的僧房十無尽院(じゅうむじんいん)があった場所と考えられている。現在も、5月中旬に茶摘みが行われる。
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